こんにちは。WESEEK代表の武井です。
前回のエントリー、「【代表が語る】WESEEKヒストリー② ー有限会社WESEEK起業ー」で起業した自分の会社、今回は黎明期の技術開発と受託案件獲得への道のりを書いていこうと思います。
Contents
黎明期、お仕事がない!
技術職の人間が代表の会社あるある、お仕事がない。大学との結びつきが強いわけでもなし、販路開拓は全くのゼロから。しかし学生企業にも強み(と言っていいのかはわからないが)はある。時間があること、特に創業メンバーはしばらく無給でも辞めないで走り続けられることは、ある種会社として利益を上げなければ存続できないという原則から外れられる武器である。
その「波に乗るまで比較的猶予期間がある」という特性を生かして会社を回せるところまで下地(取引先とか自社サービスの開発とか)を作れるのか、というのが後から気付いた「学生企業が通常企業になれるか解散するかの分水嶺」だったと思う。
基幹技術の選択
起業時の基本戦略
起業間もないWESEEKが採った基本戦略としては、
- 基幹技術の確立
- Adobe Flex によるリッチコンテンツで他社との差別化をはかる
- 受託案件の獲得
を並行してやっていくことを掲げた。
テック企業なら生き残るために必要不可欠である基幹技術。技術者が社長の場合、少なくともそこだけは考えなしにはならないのが利点であるとは思う。
ケース: インフラを武器にしようとしたベンチャー
見てきたケースを挙げる。
同世代の他の代表がやっていた会社はインフラレイヤーが好きなメンバーで構成されていた会社で、「ワンコイン(500円)で提供するレンタルサーバー」を売り出していた。
当時としては価格破壊を狙ったものだったが、そもそもレンタルサーバーの差別化をサービスで行うにはコントロールパネルをユーザーフレンドリーにするか、もしくはサーバー上に載せる機能のセットアップをなるべく簡単にする(もしくは自動化)か、とにかくその辺りは人員が少ない学生企業では競争力を生みづらい。だからこその「価格」での勝負だったのだろうが、そこも基本的にはデータセンターの集約密度を高めるかが胆で、やはり価格だけではベンチャーに勝ち筋は生まれないように思う。
ケース: WESEEKの場合
WESEEKの場合も代表である僕の好みが反映され、「ものづくり」を行う会社だというのは確定した上で、その手段の選択で基幹技術が決まるという形になった。
Flash で遊んでいた原体験から
起業メンバーは自分自身も含め開発は得意な集団だとは思っていたが、それは飽くまでも同世代の間での話。世の中の開発専門の会社との差別化要因が必要なのは言わずもがなだ。
その最初の武器を Adobe Flex によるリッチコンテンツにしよう、というのは別に勝算があって決めたわけではない。ただ高校の時に Flash を少しやってみて「これはお手軽で面白い」と感じた経験、世の中のホームページやECサイトに対する「全然動きがない、面白くない」という感想から、これらを合わせて動きのある、今で言うインタラクションデザインを導入したシステムを作れれば他社ではなくWESEEKを選ぶのではないかという漠然とした感覚を持っていた。
ポートフォリオとしての自社サイト
初期はホームページ制作、CMSカスタムのような細かい案件をこなしつつ、空いた時間で Flash/Flex 技術のポートフォリオとなる自社サイトを構築した。
上の動画はわざわざこのエントリーのために当時のホームページのデータを引っ張り出して来て Google Chrome Portable の古いバージョンで閲覧して撮ったものだが、いや今見てもよくできている(自画自賛)。
アニメだけではなく、現在時刻を反映させたアナログ時計やカレンダー、外の昼夜切り替え、その時の東京の天気情報をRSS取得して屋外に雨や雪を降らせたりといったシステム面の実装は、技術力アピールのために入れた部分。クリックしたら伸びるサボテンとか、いろいろ遊んだ砂場だったなー。
フロントエンドを先駆ける
この自社サイトはその後4~5年はどこでも「すごいね!いくら出したら同じの作ってくれる?」と言われる看板になった。黎明期のWESEEKはリッチコンテンツの制作、プログラマブルFlash/Flexを基幹技術とし、後に J2EE を組み合わせてフルスタック化するという選択したことになる。
因みに Gmail が一般的なものになってきて Ajax や XHR が基本的な Web の技術になるのはもう数年後、JavaScript や node が台頭してブラウザで今日の「フロントエンド技術」が市民権を得るのは10年後のことだ。Flex / Flash Player は Apple によってトドメを刺されたが、その頃の知見は2021年現在でも活きている。先見の明はあったはずだと信じている。
営業の入り口、異業種交流会
しかし Flex をやりたくても、それを買ってくれるお客さんは簡単には手に入らない。システムやホームページでリッチコンテンツを取り扱いたいという需要がないのだから。
そこでまずは Flex に限らず Web 全般の受託案件の需要を求めて異業種交流会にいくつか参加し、名刺交換から案件獲得という地味な開拓を行った。
今だととてもこの手を使おうとは思わない。受託の発注先を増やしたいなら案件のディレクションだけを行いたい会社にコンタクトをするのが近道だとは思うが、この頃はなんでもビジネスっぽいことをやってみるのが楽しい頃だったので地道な営業も社会勉強だと思ってやっていた。
社会人メンバー加入!受託量産計画へ
異業種交流会から得た小さな案件を細々とこなす中、自社サイトポートフォリオに着目しWESEEKを「組める相手」として見てくれる人が現れる。同じく異業種交流会で知り合った、20台後半の…あれは何をやっていた人だったんだろう。よくわからないけど、「技術はありそうだけど、周りの大人は仕事くれないの?もったいないね」と言ってくれて、じゃあ自分たちが仕事獲得してくるよと申し出てくれた。「O氏」としておく。
それまで「WESEEKは仕事を投げる先に値するか?」という目で評価・接触されたことはあったが、「一緒に仕事をするに値するか?」というジャッジはされたことがなかったので、それは単純に嬉しく、その申し出を頼れるなら頼りたいと思った。技術者は開発をやりたい生き物なのだ。
チーム編成
O氏は今後受託を増やしてもっと案件を回していくなら複数人必要だと、すぐに縁故でしばらく無給でも協力してくれる3人を連れてきてくれた。自身の部下となる人2人とそれから経営とマネジメントを牽引してくれるK氏だった。
技術チーム5人ほどを率いる僕と、営業・経営でサポートしてくれるO氏&K氏、それから2名の営業チームと戦力は一気に増えた。非エンジニア・デザイナーのメンバー加入は創業後初である。
しかしこの社会人チーム加入により、WESEEK史上唯一のクーデター未遂事件、通称「OK事変」が起こることになる…
次回、WESEEKヒストリー
学生企業の乗っ取りを謀る社会人たち、
そこで気付いた技術畑出身社長であることの意味、
そしてそこから得たチャンスについて。
今月のありがとうセルフィー
今月はGROWI本体開発チームであるGROWI村から、期間限定でGROWI.cloud開発チームへとヘルプで移籍し三面六臂の働きをしてくれた市澤くんです。
GROWI.cloud は今月5/13日に法人向けプランを一新するリニューアルリリース(TODO:プレスへのリンクを貼る)を行いました。計画が立ち上がったのは2月でしたが、GROWI.cloud開発チームの業務は機能開発はもちろん、インフラ保守、障害時のトラブルシュート、お客様へのテクニカルサポートと業務は山盛りで、レギュラーメンバーのみでは新プラン公開に必要な機能開発とサイトリニューアルのためのコーディングのスピードがどうしても出ない期間が続いていました。
そこへ投入したのが今回のありがとうセルフィーの対象、パラディン市澤!2020年4月入社の2年目ですが、開発もサポートも、いつも人より一歩先・一段上のパフォーマンスを出してくれます。今回もありがとう。頼りにしてる。
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